(Mon)
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裏界にある魔王の居城の最奥、大量のマネキンが並ぶ部屋の中心で彼女…魔王メル=アドラーは目の前に傅く者に冷たい視線を送っていた。
「…で、この私がそのどこの馬の骨ともわからない眷属風情に遅れを取ると…そういいたいのかしら?」
イラついた様子で玉座の肘掛を指で叩きながらメルは目の前の魔王…"詐術長官"カミーユ=カイムンをじっと睨み付ける。その視線を意に介すこともなく、カミーユは顔を上げて友好的な笑みを浮かべた。
「いいや、そんなことは思っていないさ。ただ、あのように特殊な落とし子に勇者魔王というこれもまた異端の存在が共闘しているという状態…どんな不測の事態が起こってもおかしくない…念には念を…という言葉があるだろう? つまりはそういうことさ」
「…あのような低能な魔王もどきと特殊だと言ってもニンゲン一人。その程度で私が貴方の力を頼る? 愚弄するのもいい加減にしてもらいたいものだな。カミーユ殿…」
声こそ抑えているが、今にも爆発しそうな怒りが込められていた。魔王の中でもプライドの高さでは有名なメルにとって、どんな意図があるにせよ、落とし子と低級魔王の二人ごときを相手に「もしも」が起こるという可能性を示唆されることすら耐えられないことだった。
「…ふぅ…ボクにはそんなつもりはないのだがね…まったく…言葉というものは難しい」
わざとらしくため息を吐きながら、カミーユはゆっくりと立ち上がりメルへと背を向けた。
「それでは、そろそろお客様が到着するみたいだしね、ボクは失礼させてもらうよ…」
カミーユはその言葉を残し、その場から消えた。
「…さて…愚かな来訪者たちを迎える準備をしなくては…ふふふ」
色とりどりの衣装に身を包んだマネキンたちをひと撫でして、メルは嗜虐的な笑みを浮かべた。