(Mon)
[PR]
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
魔王の戦いの後、すぐに倒れてしまった私。そんな私が目を覚ますと。そこは見知らぬ部屋のベッドだった。
「…あれ? ここ…どこ?」
「…今日から、貴方の城となった場所ですよ…ハルカ」
私の疑問に答えたのは、何故か部屋の端っこで椅子に座って本を読んでいたリオンちゃんだった。
「…私の……あ…そっか…」
そっか。魔王に勝ったことでこの城も私のものになったのか…。
「ええ、このあまりにもアレな外観の無限城アルカンシエル(命名:魔王メル=アドラー)は貴方のものですよ」
「…う…嬉しいような…心から認めたくないような…」
やけに爽やかな笑顔を浮かべて言うリオンちゃんに思わず頭を抱える。ううん…。
「さて…ハルカ。皆が待っています…。行きましょう?」
「……ん? うん……」
リオンちゃんに手を引かれ、私はベッドから立ち上がる。一体なんだろう? 待ってるって…。
「さあ、ハルカ…」
手を引かれるままに連れてこられたのは大量のマネキンと戦った広間の前だった。軽く背中をリオンちゃんに叩かれる。入れってこと?
「えっと…よいっしょ……って…あ…」
扉を開けた私の目に飛び込んできたのは、綺麗に飾り付けられた広間と『魔王誕生おめでとう』の垂れ幕。そして、笑顔で迎えてくれるみんなだった。
「…ハルカ! おめでとう!!」
「…アンタにしてはよくやったじゃない?」
「ハルカ…おめでとうございます」
「「「魔王様バンザーイ!!」」」
ムツミ、ベル、リオンちゃん…それと…誰? そこにいるエミュレイターらしき集団は誰ぇぇぇ!!?
「…あ、あの…ベル…そこにいる方々は…誰…?」
「…誰って…アンタの配下に決まってるじゃない?」
「へぇ……って…えええええええええええええええ!!!!!?」
何気ない顔で言うからスルーしそうになったけど…え、何? 何で? ええ?
「魔王様! ありがとうございます! 俺、一生ついていきます!」
「お前、抜け駆けすんなよ! 俺も、いや俺のほうが!!」
「魔王様…いいえ…お姉さまと呼んでもよろしいでしょうか…?」
呆然としている私に迫ってくる…私の…配下? たち。何でそんなに友好的なんですか? 私、この人たちのボスをフルボッコにしたんだけど…。
「…あ、あのさ…。どうして…私、あんたたちの親玉を倒したのよ…?」
困惑気味の私に、配下たち? は一瞬きょとんとした顔をして、それから笑顔で言った。
配下? の証言
case01:ネフィリムさん
『メルは俺たちをまるでモノのように扱うんだ。もう、やってらんないよ。それに比べて魔王様は勇猛果敢で純情可憐で、それに『つんでれ』だそうじゃないか! ムツミから聞いたよ』
case02:ケルベロスさん
『メルは俺たちに優しい言葉をかけたことなんてないんだ。怒ってばかりさ。それに比べて魔王様は奈落より深い愛で接してくれて、さらに『つんでれ』という話じゃないか! ムツミが言ってたよ』
case03:ヴァルキリーさん
『あぁ…あんな趣味の悪い女と違って、その冷徹で冷静な瞳。知的な口元。威厳さえ感じさせるお姿…。私も…ムツミのように叱って下さいませええええええええ!!!』
「…ム…ムツミ…」
じとーっとした目で私はムツミを見つめる。この魔王は一体この人たちに何を吹き込んだんだ…? いや、敵対されて第2ラウンドよりはマシなのだけど…。あ、目を逸らした。
「まぁ、いいじゃない。ちゃんと面倒見てあげなさいよ…? 魔王様?」
意地悪な笑みを浮かべたベルが私の肩を叩く。くぅ…何だか悔しい。
「……ま、これもいっか」
私は目の前にいる配下たちを見回したあと、深く息を吐いて心を落ち着ける。よし、魔王業務の第一歩だ。
「みんな…魔王初心者の私だけど……あの…力を貸してくれないかな…?」
「「「魔王様バンザーーーーーイ!!!」」」
私の一言に、まるでアイドルの親衛隊のようにみんなが拳を突き上げる。ちょっと怖い。
「人気者ですね…ハルカ」
「…ふふ…ハル閣下というところかしら?」
リオンちゃんとベルが私の肩に手を置く。うう…なんでそんないい笑顔なのさ…この魔王どもめ!!
「…あ、あのさ…そろそろ料理も冷めちゃうし、祝賀会を始めようよ…」
さすがに悪いと思ったのか、ムツミが目で謝りながらそう言った。それにはみんな同意して、それぞれが料理を取りに移動を始めた。