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おいしい声(もの)たべたい。

ここは主食が『声』のさすらい人「御影」が、日々の雑記やらその日食べたごはん。その他を自由気ままに語るブログです。日々、腹痛に注意。
HOME » TRPG小説 » scene7:勇者魔王の心-ハルカという落とし子-
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「ふはははははっ!! 次ッ!!」
 目の前の少女、ハルカがおおよそ女の子が出すべきでない笑い声を上げながら連鎖的に爆発を繰り返す空間に対して拳圧を打ち込む。別にハルカがこう言った危機的状態で性格が入れ替わる戦闘狂(バトルマニア)というわけじゃない。最初はある程度罠や敵影を気にしてはいたのだけれど、一歩進むごとに何もない空間からビームやら弓矢やら爆発があたしたちを襲った。もちろん対処法も考えた(一瞬だけ)のだけど、それにも限界がある。ハルカが言うには「感覚を狂わせる何かがあるような気がしないでもない」らしいけど、何かの達人というわけじゃないのであたしたちに何がわかるでもない。そして、ついにハルカがキレた。
「…は、ハルカ…ちょっと、そんなんでいいの?」
「発動する前に止めるのも、発動した後の攻撃を止めるのも一緒でしょ? なら私は自分の拳を信じる!」
 なんだかすごくかっこいいこと言ってるとは思うんだけど、その目が「もういい、全部潰す」と物語っている。あと、ヒーラーって拳を信じるものなの? もっとこう、今まで見たヒーラーって華奢で、でも芯は強い。そんなイメージの人ばかりだったんだけど…。
「タンブリングゥゥ……ダウンッッッ!!」
 遠くから狙う見えない砲台に、砲弾が飛んできた方向に突進するという荒業で掌底を叩き込むハルカを見ながら、あたしは思っていた。ハルカという落とし子のことを。


 彼女…ハルカと初めて出会ったのは、あたしがまだ、一人だった頃。『誰かを助ける』そんな当たり前なことをしようとするあたしを、他の魔王は裏切り者と罵り、ウィザードたちは罠ではないかと遠ざけた。
「…あたしはただ誰かの役に立ちたいだけなのに…」
 傷ついた体を引きずりながら、あたしはどんよりと滲む空に独りごちた。今にも泣き出しそうな空が、まるであたしのようで…目頭が、熱くなる。
「…あたしが魔王だから…いけないの?」
 何度も繰り返した自問自答。罵られるのも、遠ざけられるのも、すべてはこの身に流れる魔王の血のせい。あたしがあたしであるから、だからみんなはあたしを嫌う。
「……うぅ…っ…っ……」
 現実が、真実があたしを押しつぶす。思わず、涙が溢れた。絶対に泣かない。そう決めていたのに、ダメだった。次から次へと零れる涙を止めようと、必死で顔を擦っても、止まらない。一度折れてしまった心を繋ぎとめることは出来なかった。
「……あんた…どうしたの?」
 うつむいたあたしに、誰かが声をかけた。見上げると、そこには一人の少女が立っていた。曇り空にあっても、色を失わない銀色の髪。まるで童話の中の魔法使いのような黒い衣装。そして、その中で一際輝く鋭い真紅の瞳が、そらされることなくあたしを見つめている。
「あ、あたしは…」
 否定と拒絶。繰り返された現実があたしの言葉を遮る。そんなあたしに、彼女はそのツリ目がちな赤い瞳を揺らして、優しく笑った。
「ま、別にいいわ。ちょっとじっとしてなさい。さほど強い治癒魔法じゃないけど、ないよりマシでしょ?」
 彼女の差し出した掌があたしの額に優しく触れる。強くはないけど、暖かい、そんな魔力が体を浸透していく。
「…さて、応急処置は終了。完全に治したいなら安静にしてるか、もっとちゃんとしたヒーラーに頼みなさい」
 彼女はどこか自嘲気味に笑って、視線を今にも泣きそうな空へと向けた。
「…これは降るわね…。私は用事があるから急ぐけど、あんたも早くしたほうがいいわよ」
 黒いマントを翻し、彼女は私に背を向ける。そこであたしは気づく。彼女は用事があるのに、わざわざあたしの元へ来たのだ…と。
「あ、あの…あなたは…? あたしを…軽蔑しないの…?」
「…え?」
 あたしの言葉に一瞬、驚いた顔をした彼女が困ったものを見るような視線に変わる。やっぱり、この人も…。
「…あ、あんた…もしかして…罵られたり縛ったり垂らされたりされたいとか思っているタイプ…? いくら私がヒーラーだと言っても、そんな歪んだ性癖まで満足させることは出来ないわよ…」
「…え?」
 今度は、あたしが驚く番だった。もしかして、この人はあたしのことを知らない?
「あ、あの…もしかして…あなたはあたしのこと…知らないの?」
「え? 知ってるわよ。勇者魔王ムツミ=アマミ。ウィザードと魔王、そんなの問わずに人助けをする大馬鹿魔王…」
「…う…」
 彼女の言葉が突き刺さる。やっぱりあたしという存在は誰にも認められない。そんな考えが、思考を支配する。
「……でも、私は大馬鹿でいいと思うよ」
 ふと、優しい声で彼女が言った。その瞳は、あたしを見ながら、それいでいてどこか遠くを見ているようだった。
「…私はね、ウィザードだから助けたり、魔王だから倒したり…そういうのは出来ない。ウィザードの仲間もいたし、魔王の友達だっている…」
 そこで言葉を止め、ふっ…と息を吐いて、照れたように笑い
「だからさ、あんたみたいな、大馬鹿っていいと思うよ」
 また、涙が出た。今度は、すごく暖かい涙。初めて、真正面から見つめてくれた喜びと、優しさに…。
「ちょっ…何泣いてんの!? わ、私また冷たい目で見てた!? ああ、ベルにも『アンタ、黙ってると何人か人殺してるように見えるわよ』とか言われてるのに!」
「……あは」
 突然、見当違いのことで慌て始める彼女に、自然と笑いが零れた。不思議そうに見つめる彼女に、あたしは涙を拭って笑顔で告げる。
「……ありがとう。もし、よかったら…あたしの友達になってください…」

 これが、あたしと彼女…ハルカとの出会いだった。クールなように見えて、どこか抜けている。不思議な落とし子との。


「扉…発見!! ついでに魔力反応多数!! だが…知るかァァァァァァ!!!!」
 回想から戻ったあたしの前で、突撃、爆発、そして…立ち昇る煙…。
「…本当に、ハルカってヒーラーなの…?」
 晴れてゆく煙の中で、無効化した魔力爆弾を握りつぶすハルカを見つめながら、あたしは苦笑した。
 

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