(Tue)
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「あたしが先行するから、支援お願い!!」
「わかった…! 次を右!!」
さらに苛烈さを増したステルストラップ地獄を駆け抜けながら、私は一直線に魔王の元へと向かっていた。製作者の趣味なのか、複雑に空間が入り組んでいるが、ベルから渡された「遠見のコンパクト」の力によって最短距離を私たちは移動していた。
『一度相手の魔力を登録してしまえば、ある程度以上の魔力の持ち主ならどこに行っても逃さないわよ…ふふふ』
『え…それって自動マー…』
『な、何言ってんのよ…! これは遠見のコンパクトと言って…』
あの時は色々と心配だったが、やはりそれは大魔王が作り上げた魔道具、その効果は折り紙つきみたいだ。
「そこを左に曲がったら、見えるはず!」
「おっけー!!」
周囲に殺到する魔力ビットたちに拳を叩き込みながら、アイコンタクトを交わす。私は目の前でしゃがんだムツミの肩を踏み台に跳躍する。さらに魔力を爆発させ、二段ジャンプの要領で天井近くでビットにエネルギーを供給していたマザービットを掴み、落下の威力を乗せて地面に叩きつける。
「ナイス、ハルカ!!」
「ムツミも、いいタイミングだったわ」
バラバラと落ちてゆくビットの中でムツミが笑顔で私に向けて親指を上げる。それに親指を上げて返しながら、目の前にある扉に目を向ける。金色の華美な装飾を施された扉は無闇に威圧感を放っていた。
「…うっわ…」
「…また…すごいね…これは…」
これを対峙した存在の精神を攻撃するためにしているのならその知略に感服するのだけど…そんなわけない…あれは…趣味だ…。
「…ねぇ、ハルカ」
「何?」
扉に心を奪われて(ある意味)いた私に、ムツミが何か決心した顔で声をかけた。
「さっき…言えなかったけど…ハルカ…ありがとう…」
「何よ…ちゃんと私のために戦ってるんだから…それでいいわよ」
改まって言うムツミに、私は不敵な笑みで返す。ムツミが乗り越えたならそれでいい。あれは私が一方的に怒っただけなんだから。
「…ありがとう…」
「…さ、さぁ…いくわよ…まだこれからが本番なんだから」
何だか恥ずかしくなってきたので、思わず視線をそらしてしまう。まったく、私はこんな所で素直じゃない…。
「あ、うん…!!」
明るいムツミの声を背中に聞きながら、私は扉を開けた。